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経鼻免疫により鼻粘膜に誘導される分泌型IgA抗体がウイルス感染を抑制する機構をモノクローナル抗体レベルで解明

 鼻腔に病原体由来の抗原を摂取する経鼻ワクチンは、鼻粘膜上に分泌型IgA抗体を誘導すると共に、血液中にも抗体を誘導できることから、感染防御と重症化予防の両者を兼ね備えた次世代ワクチンとしてその効果が期待されています。しかし、なぜ経鼻ワクチン接種により鼻腔以外の組織で抗体が産生されるのかについては不明でした。我々のチーム(黒澤信幸、小池誠一ほか)は、新型コロナウイルス由来のタンパク質を経鼻免疫したマウスから抗原特異的モノクローナル抗体を大規模に取得し、得られた各抗体クローンの遺伝子配列を解析しました。その結果、鼻粘膜で抗原刺激を受けた抗体産生細胞が、鼻粘膜で分泌型IgA抗体を産生するのみならず、その一部が全身のリンパ組織に移行して単量体抗体の産生にも関与することを明らかにしました。さらに、単量体IgAモノクローナル抗体の約70%は中和活性を示さなかったが、これらを4〜8箇所の抗原結合部位を持つ分泌型IgA抗体に変えると強い中和活性を示すようになることを発見しました。本研究成果は、経鼻ワクチン特有の抗体誘導機構の一端を明らかにするものであり、感染防御能力と重症化抑制能力を兼ね備えた高性能な経鼻ワクチン開発に貢献すると期待されます。
 本研究成果は、「elife(掲載誌)」に 2025 年 5 月 9 日(金)(日本時間)に掲載されました。

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