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1ステップで合成可能かつ強力な新規PAC1受容体小分子拮抗薬の開発に成功

帯状疱疹後神経痛や糖尿病性神経障害など神経が障害されて発症する神経障害性疼痛は,体に軽く触れただけでも激しい痛みを感じるため,日常生活に大きな支障を来たします。これまでの研究で,研究代表者の髙﨑らは,これらの疼痛にPACAP(Pituitary Adenylate Cyclase-Activating Polypeptide)とその受容体であるPAC1受容体が関与していることを見出してきました。したがってPAC1受容体が新規鎮痛薬の開発において有用なターゲットとなる可能性があります。しかしながらPAC1受容体のペプチド性アンタゴニストは存在するものの,医薬品として有用性の高い小分子アンタゴニストの報告はありませんでした。

 富山大学学術研究部工学系・生体情報薬理学の髙﨑一朗准教授,生体機能性分子工学本研究の岡田卓哉助教,豊岡尚樹教授の研究グループは,鹿児島大学,昭和大学,大阪大学との共同研究において,コンピュータを用いたドッキングベースのin silico screeningによるリード化合物の探索,誘導体化合物の有機合成展開,in vitroおよびin vivo薬理学試験を行い,PAC1受容体に対し選択的かつ強力に拮抗作用を示す小分子アンタゴニスト(化合物2o)の開発に成功いたしました。化合物2oは,マウスにおいて良好な薬物動態プロファイルを示すとともに,坐骨神経の損傷によって生じる疼痛反応(神経障害性疼痛モデル)に対し,強い鎮痛作用を示すことを明らかにしました。また本化合物は,有機合成において1ステップで高収率に合成が可能なため,医薬品開発において,大量合成が可能で安価な拮抗薬となる可能性があります。

本研究の成果は,2022年1月29日に「European Journal of Medicinal Chemistry」にオンライン掲載されました。

本研究は日本学術振興会科学研究費助成事業、ほくぎん若手研究者助成金,中富健康科学振興財団,JSTムーンショット研究事業(JPMJMS2021)などの支援を受けて行われました。

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