北里大学 君嶋葵 先生の特別講演会「有機化学を基盤とした生物活性天然物に関する研究」を行いました.
2024.1.26
名称:令和5年度 生命融合科学教育部 特別講演会
演題:有機化学を基盤とした生物活性天然物に関する研究
演者:北里大学 大村智記念研究所 感染制御科学府
創薬化学部門 微生物応用化学研究室 助教
君嶋 葵 先生
日時:令和6年 1月26日(金) 15:30~17:00
場所:富山大学工学部・多目的ホール
本講演では演者が所属する北里大学大村智記念研究所で発見された複雑な構造を持ち、かつ多彩な生物活性が期待される天然有機化合物の合成および詳細な作用機序解析に関する最近の研究成果を中心にご講演頂いた。天然には医薬品としての応用が期待されている貴重な天然物が数多く存在する一方で、その供給量は限られていることから、完全化学合成(全合成)による量的確保が強く望まれている。演者はユニークな血小板凝集阻害効果を有する天然アルカロイドHerquline BおよびCの全合成に成功し、提唱されている化学構造の誤りを明らかにした。また新規抗菌薬としての応用が期待されるLuminamicinの初の全合成を19年かけて達成し、合成経路は本天然物の分解実験を通して効率的に立案した経緯についてもご紹介頂いた。本講演にて全合成研究の重要性を再認識することができた。さらに天然物を基盤とした構造―活性相関研究をはじめとする創薬研究や、演者独自の技術を駆使した新規創薬シード化合物の創出に至るまで、有機合成化学者のみならず、創薬化学者・薬理学者にとっても示唆に富む講演内容であった。