われわれの研究グループは表面近傍の屈折率や誘電率の変化の高感度検出法として知られBiacoreなど免疫センサでも使われている表面プラズモン共鳴(SPR)センサの研究に長年取り組んでおり現在はこれを2次元化したSPRイメージングの研究をしています。特にSPRセンサではこれまで使われてこなかった600nm以下の比較的短い波長の光源を用いたSPRイメージングを実現するための手法を開発してきました。これを用いて細胞1個1個のレベルで観察できる高解像イメージングの実現や表面プラズモン増強蛍光(SPEF)との同時測定の研究を行っています。
酸素濃度により蛍光強度が変化するルテニウム錯体を用いて多彩な形状の、酸素センサや、固定化酸化酵素と組み合わせたバイオセンサの開発を行っています。特に細胞が1個ずつ入る大きさのマイクロウェルアレイシートと組み合わせた単一細胞レベルでの呼吸活性測定用センサや、蛍光色素を塗布した食品用フィルムや色素を混合したPDMSシートを用いた酸素イメージングシートの開発に取り組んでいます。また微小流路における混合状態の可視化にも成功しました。
発展途上国の環境測定にも使えるバイオセンサをコンセプトに低コストで簡易な携帯型バイオセンサの開発に取り組んでいます。蛍光酸素センサと固定化酵母を組み合わせた低コストなBOD(生物化学的酸素要求量)センサチップの開発、スマートフォンを用いた蛍光画像の取得と輝度の測定に取り組んでいます。またセンサとアクチュエータの教育・研究用ツールとしてのレゴマインドストリームの可能性に着目して、フロー型バイオセンサのレゴ化に取り組んでいます。レゴとコンパチブルでレゴを組み立てるようにフロー型バイオセンサを作製できるようにし、装置の低コスト化やアクチュエータとの連携実験教材として活用します。
われわれのグループは長年にわたりバイオセンサの微小化・集積化に取り組んできました。マイクロ化プロセスのバイオセンサ製作工程への導入に積極的に取り組んでいます。最近の成果としては、マイクロコンタクトプリンティング技術を用いた集積化酵素センサの作製や、酸化還元状態により導電性が変化するポリアニリンと酸化還元酵素を組み合わせた“酵素スイッチ”の微小集積化についても研究しています。
最近iPS細胞などの研究の進展により単一細胞レベルでの解析が盛んになりそのための支援技術の開発が要望されてきています。われわれの研究グループではこれまでに細胞がちょうど1個入る大きさのマイクロウェル(リンパ球用で直径10μm、受精卵用で直径300μm)の底に蛍光酸素センサ膜を形成し、呼吸活性計測のためのセンサシステムを開発しました。また同様にサイトカイン計測用のマイクロウェルアレイ型のSPR免疫センサの開発にも成功しています。またセンサ以外にも、誘電泳動を利用して微小なマイクロウェル中に細胞を効率よく導入する技術の開発や、企業と協力してウェルから細胞を回収する装置の開発も行いました。
鈴木 正康教授
Masayasu SUZUKI
略歴
横浜国立大学工学部卒業、東京工業大学大学院博士課程修了、西ドイツ国立バイオテクノロジー研究所(GBF)、東京大学先端科学技術研究センター助手、九州工業大学情報工学部助教授、富山大学工学部教授、富山大学大学院理工学研究部教授、現在に至る
学位・資格等
工学博士
専門分野
生物計測工学、バイオセンサ、バイオエレクトロニクス
主な業績
プロフィール
学際領域一筋に40年。
入部 康敬技術職員
Yasunori IRIBE
略歴
福岡工業大学卒業、九州工業大学大学院博士前期課程修了、(財)富山県新世紀産業機構、富山大学技術職員、現在に至る
学位・資格等
工学士、情報工学修士
専門分野
バイオセンサ、μTAS
主な業績