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コロイド界面化学研究室
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キャッチコピー2
研究紹介
研究概要
当研究室では主に二つの現象について研究をおこなっています。
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1.コロイド結晶
コロイド結晶とは、固体結晶中の原子分子のようにコロイド粒子が配列した状態のことです。
純水中に分散した荷電粒子のコロイド結晶が最もきれいに配列することがわかっています。
直径が約300nm以上の粒子は、光学顕微鏡で配列状態を観察することが可能なので、原子分子の結晶成長過程の研究におおいに役立っています。
結晶格子面の間隔が可視光の波長と同程度なので、光学素子としての応用も期待されています。
2.不均一粒子分布
Brown運動する荷電コロイド粒子が分散液中で不均一に分布する現象です。
コロイド界面化学の教科書に載っている理論では、同符号の荷電粒子どうしは反発することに なっていますが、荷電粒子間静電相互作用が強い条件下では、自発的に集合することがわかりま
した。
一見すると説明がつかないこの現象の発現機構を明らかにして、新理論の構築を促すことがこの 研究の目的です。
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コロイド結晶
結晶成長過程の解析と新機能材料の開発
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一般に、分散液中でコロイド結晶を作製すると、1mm以下の微結晶が多数形成されます。
左の写真は、微結晶を光学顕微鏡で拡大して撮影したものです。方向が異なる微結晶が白色光をBragg反射しているため、個々の微結晶が異なる色に見えています。
この分散液を0.1mm隔てた二枚の平板間で流動させると、微結晶がいったん融解し、流動を停止した直後、平板近傍から再結晶化するため、厚さ0.1mmの薄膜型コロイド単結晶が形成されることがわかりました。
右側の写真では、縦1cm、横2cmの範囲で赤色の光だけをBragg反射していることから、センチメートルサイズの大型コロイド単結晶が形成されていることがわかります。
平板の間隔を広くすると、流動によって微結晶が完全には融解せず、微結晶が残存するため、単結晶を得ることができませんが、次に紹介する準安定状態のコロイド分散液を用いて、より分厚いコロイド単結晶を作製しようと試みています。
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一般に、粒子濃度が高く粒子間静電相互作用が強いほどコロイド結晶が形成されやすくなり、逆に、粒子濃度が低く粒子間静電相互作用が弱いとき、粒子分布は液体状態になります。
左の図は、分散液にごく少量の塩化ナトリウムを添加し、粒子間静電相互作用の強さを変化させて、コロイド結晶が形成されるかどうかを調べた結果です。
結晶状態と液体状態の境界領域に、準安定状態があることがわかりました。
この状態では、分散液を調製した直後は液体状態のままですが、一定の誘導期間後に突然結晶核が形成され、個々の結晶核が成長して、分散液全体が結晶化します。
結晶核の数が少ない条件で実験すると、たて、よこ、たかさともセンチメートルサイズのコロイド単結晶が成長することがわかりました。
これまでに報告された大型のコロイド結晶は、面心立方格子と体心立方格子の2種類の構造だけでしたが、当研究室では、準安定状態の分散液を用いることで、これら以外の格子構造を持つ大型コロイド結晶を作製しようと試みています。
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荷電粒子間静電相互作用が強くても、コロイド結晶が形成されないほど粒子濃度が低いとき、粒子分布は液体状または気体状になります。
同符号荷電粒子間に静電反発力しか作用しない場合、個々の粒子はランダムなBrown運動をしているので、いずれの状態においても粒子濃度は均一になることが予想されます。
しかし、レーザー光を光源とする共焦点レーザースキャン顕微鏡を用いて、希薄な分散液の内部を観察した結果、同符号荷電粒子同士が局所的に集合した領域と、逆に粒子がほとんど存在しないVoid領域が共存していることがわかりました。
塩化ナトリウムを添加して荷電粒子間静電相互作用を遮蔽すると、同じ粒子濃度条件においてこのVoid構造が観察されなかったことから、この構造が同符号荷電粒子間静電相互作用によって形成されていることが確認できました。
同符号の電荷をもった荷電粒子が自発的に寄り集まっていることを説明するには、同符号荷電粒子間に静電引力が作用していることを示す新たな理論が必要になります。
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メンバー紹介
伊藤 研策准教授
Kensaku ITO, Associate Professor
専門分野
コロイド界面化学(Colloid and Interface Chemistry)
高分子化学(Polymer Chemitsry)
研究業績
著書・編著
- 高分子の化学、第4章 高分子の溶液、三共出版
- これでわかる 基礎高分子化学、第Ⅱ編 物性編 高分子の熱的性質、高分子溶液の性質、三共出版