Immersed Boundary-Lattice Boltzmann Methodにおける流速の滑りと温度の跳びに関する研究
数値計算手法の一つである格子ボルツマン法について研究をしています。格子ボルツマン法は、質量の保存性と並列計算効率に優れ、大規模高速計算が可能ですが、単純な手法であるが故、問題点もあります。例えば,埋め込み境界法(Immersed Boundary Method, IBM)を格子ボルツマン法(Lattice Boltzmann Method, LBM)に適用したImmersed Boundary-Lattice Boltzmann Method (IB-LBM)では、左図のように、緩和時間が増大すると、境界滑りと呼ばれる流速の滑りや温度の跳びが発生します。境界滑りと緩和時間との関係式を導出し、理論解と数値解とを比較することで、多緩和時間衝突則により、右図のように、境界滑りが除去されることを実証しました。
Lattice Boltzmann Methodによる濡れ性を考慮した気液・固気二相流解析
格子ボルツマン法では、分布関数により気相と液相間の界面張力を局所的に計算することで、複雑な気液界面形状を自律的に計算することが出来ます。下図のように、微小な液滴が表面張力によって合体する複雑な界面現象を再現することに成功しています。
また、ハスの葉には、表面上に10μmと1μmの二種類のスケールの凹凸構造が存在することで、濡れ角が150度以上になる超撥水現象が発生することが知られています。下図のように平板や、球面に対し、濡れ性を制御する格子ボルツマン法を提案することに成功しました。これにより、微細な凹凸構造に基づくハスの葉面上の撥水効果(ロータス効果)の解明が期待されます。
ナノスケール構造特性の計算への分子動力学法の応用
低次元炭素材料における熱およびエネルギー移動
熱伝導体に用いられるのは、従来はシリコンがメインだったが、それよりも遥かに優れた熱伝導性を持つグラフェンの実用化に向けての研究を局所的に進めている。グラフェンの一部分のモデルを計算機上で再現し、そこである一定の場所に熱を加えることで伝導の伝わりかたや熱周波数等のデータを手に入れることができる。
熱伝搬においてのグラフェンという物質はどう活きていくのかというものを研究しています。.
ナノスケールでおける平板間に閉じ込められた流体の密度および粘性を計算する
分子動力学(MD)法は、ナノスケールにおける流体の挙動や特性について、広い条件に対して使用できるため多く使用されてきた。
ラボオンチップとナノ電気機械システムの場合でナノスケールにおける流体の挙動の解明が重要視されるようになった。我々は以下の性質を見つけた。
速度を変化させると、粘度や密度も変化する。
領域全体の速度が大きいほど、粘度や密度の変化も大きい。速度と粘度、速度と密度はそれぞれ比例の関係にある。
グラフェンナノ細孔を介した通過の過程におけるDNAヌクレオチドのIRスペクトルの分子動力学による評価
ラマンおよびIRスペクトルを用いてDNA分子中のヌクレオチドを配列決定し、メチル化ヌクレオチドを見出す可能性のシミュレーションが行われている。
分子動力学シミュレーションおよび量子力学シミュレーションの結果を比較して、異なる振動モードのスペクトルマップを見つける。
数値シミュレーションと安定性解析による流れの不安定現象の解明と制御
高次精度コンパクト差分法を用いた高精度な数値シミュレーションや線形安定性理論に基づく解析により、流れに生じる不安定波・渦構造・発生する音波を解析し騒音や壁面摩擦抵抗低減などの流れの制御手法の研究を行っています。
ジェット・ロケットエンジンからの騒音発生機構の解明と低減手法の研究
「低い進行速度を持つ不安定波によるジェットの拡散促進効果」などの超音速ジェットの特性を利用し、ジェットの騒音抑制や拡散制御について調べています。
左から「超音速ジェットの乱流遷移構造(渦構造)」、「超音速ジェットの渦構造と発生する騒音(渦構造と圧力)」、「不安定波により騒音放射方向を制御(渦構造と圧力)」
新幹線・航空機などを想定した高速流での壁面摩擦抵抗低減および音波発生の研究
さまざまなスケールの乱れを上流に与え、層流から乱流に至る過程を調べ、乱流へのトリガーとなる流れ中の渦構造などを見極めることによって、トリガーとなる渦構造を抑制する方法について調べています。また、乱流遷移に伴う音波の発生機構も調べています。
左から「上流から見た物体表面上の層流乱流遷移(渦構造と圧力)」、「下流から見た図(音波発生部)」、「壁面上の低流速部と高流速部および渦構造」
瀬田 剛教授
Takeshi SETA, Professor
略歴
東京工業大学工部卒業、東京工業大学大学院博士課程修了、IBM T. J. Watson Research Center、エネルギー総合工学研究所、静岡産業大学経営学部講師、富山大学大学院理工学研究部講師、富山大学大学院理工学研究部准教授、富山大学大学院理工学研究部教授 現在に至る
学位・資格等
博士(工学)
専門分野
主な業績
プロフィール
好きなタレント:おぎやはぎ
タチアナ ゾロツキヒナ講師
Tatiana ZOLOTOUKHINA, Lecturer
略歴
ベラルス国立大学(ミンスク)物理学科 卒業, 熱物質伝達研究所(ミンスク)物理系博士課程 卒業
東京大学工学部工学研究科 研究生, 日本学術振興会研究員, 助教授(寄附講座)
日本原子力研究所特別研究員,
新エネルギー・産業技術総合開発機産業技術研究員, 科学技術興会機構協同研究員,
産業技術総会研究所特別研究員、マイクロ・ナノ機能広域発現研究センター
富山大学工学部院理工学研究部 講師
学位・資格等
博士(理学)ソ連の状態認証委員会
専門分野
Nanoscale energy and heat transfer, molecular vibrational (Raman & IR) spectra, graphene sensors
ナノスケールのエネルギーと熱伝達、分子振動(ラマンとIR)スペクトル、グラフェンセンサー
主な業績
平成12年度 第5号議案 日本伝熱学会賞の授賞
学術賞: Interaction of H2 Molecule with Nanoporous Surface:
Translation Motion. Thermal Science and Engineering
代表研究者: Tatiana N. Zolotoukhina
渡邊 大輔講師
Daisuke Watanabe, Lecturer
略歴
電気通信大学卒業、電気通信大学大学院 院博士課程修了、広島大学大学院工学研究科 助手、富山大学工学部 講師、現在に至る
学位・資格等
博士(工学)
専門分野
流体工学、数値流体力学、空力音響学
主な業績
超音速平面乱流ジェットの斜め不安定モードによる騒音低減
超音速境界層における流入撹乱スケールの乱流遷移への影響解析
2018年 日本計算数理工学会 2018年度論文賞